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膠原病と類縁疾患

Q6抗核抗体とはなんですか?また、全身性強皮症にはどのような抗核抗体がありますか?

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 自己抗体の中でも、細胞の「核」という部分に対する自己抗体を抗核抗体と呼びます(図1)。
「核」は、人間の体の設計図である遺伝子が働く重要な場所です。全身性強皮症の90%以上で抗核抗体が陽性となります。抗核抗体は健康な人でも数%陽性となりますが、一般的に弱くしか陽性になりません。

 全身性強皮症では抗核抗体は、全身性強皮症の病型、特定の内臓病変、病気の進行と関連が深いため、病気の進行などを予測する上で非常に大切な情報となりますので、自分がどの抗核抗体をもっているかを知っておきましょう。また、全身性強皮症の抗核抗体には次のような特徴があることを憶えておいて下さい。

  1. 全身性強皮症に特徴的な抗核抗体は、一人の患者さんでは、通常一種類だけが陽性となり、同時に二種類以上の抗核抗体が陽性になることは少ない。
  2. 抗核抗体は、経過中にそれまで陰性であったものが突然陽性となったり、逆に陽性であったものが陰性になったりすることは少ない。
  3. 経過中、一人の全身性強皮症の患者さんで抗核抗体の種類が変わることはほとんどない。

以下に全身性強皮症で重要な抗核抗体について説明します。

1. 抗セントロメア抗体

 細胞の核にあるセントロメアと呼ばれる部分に対する自己抗体です。この抗体は全身性強皮症の約40%に陽性となります。この抗体はアメリカのリウマチ医であるルロイとメズガーによる分類の、症状が比較的軽い、限局皮膚硬化型全身性強皮症に陽性となることの多い抗体です。この抗体を持っている全身性強皮症の患者さんは、皮膚硬化の範囲、程度が軽く、肺線維症などの重い内臓病変を合併することはまれですが、皮膚の毛細血管拡張、(図2)皮膚の石灰沈着をしばしば伴います。なお、「限局皮膚硬化型全身性強皮症」と「限局性強皮症」は全く異なる病気ですので、混同しないように注意して下さい。

2. 抗トポイソメラーゼ I(Scl-70)抗体

 これも細胞の核にあるトポイソメラーゼ Iと呼ばれる酵素に対する自己抗体です。抗トポイソメラーゼ I抗体は、以前は抗Scl-70抗体と呼ばれていました。全身性強皮症の患者さんでは約30%に陽性となります。ルロイとメズガーらによる分類の、全身性強皮症として典型的な、びまん皮膚硬化型全身性強皮症で高率に陽性となります。従って、この抗体を持っている患者さんは、ほぼ間違いなく全身性強皮症と診断されます。この抗体は、比較的広い範囲に及ぶ皮膚硬化や肺線維症などの内臓病変と関連があります。この抗体が陽性の場合、肺線維症は約80%で認められます。

3. 抗RNAポリメラーゼ抗体

 抗RNAポリメラーゼ抗体は、わが国では約6%の全身性強皮症の患者さんで検出されます。この抗体を持っている患者さんでは、比較的広い範囲に及ぶ皮膚硬化があり、肺線維症が少ない代わりに、強皮症腎クリーゼを合併することが多いことが知られています(多いといっても10%程度です)。皮膚硬化は急速に進行することが多く、しばしば胸や腹まで拡大します。

4. 抗U1RNP抗体

 抗U1RNP抗体は、膠原病の一つである混合性結合組織病の患者さんで高率に陽性になる抗核抗体ですが、全身性強皮症の患者さんでも陽性となります。この抗体を持っている全身性強皮症患者さんでは、手や指にむくみを伴った皮膚硬化がでるのが特徴です。また、他の膠原病の症状を一部合併したりすることもあります。

図1:抗核抗体

丸く緑に染まっている部分が核であり、その核に抗体が結合しているために緑に染まっています。

図1
図2:毛細血管拡張
図2

全身性強皮症


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