Q20皮膚潰瘍にはどのような治療をするのですか?
全身性強皮症では、特に冬に、指先などに潰瘍ができます(図13)。この潰瘍は痛みが強いので、全身性強皮症患者さんにとっては大問題です。全身性強皮症では、血管の内腔が狭くなるため、血液の流れが悪くなり、酸素が充分に運ばれないために、指先などの皮膚が死んで潰瘍ができます。時には、指先が黒くなって壊疽と呼ばれる状態になることもあります。また、手指以外にも足などに潰瘍が生じることもあります。
重症の皮膚潰瘍を治療する上で最も重要なことは、入院して潰瘍ができている場所(手が多いのですが)の安静を取ることです。家にいるとどうしても家事などをしてしまいますので、なかなか良くなりません。まず入院して患部の安静をはかることが重要です。次に薬物療法ですが、血管拡張薬と呼ばれるお薬を多数組み合わせて治療します。この場合に注意することは、これらのお薬は血管を広げる作用を持っていますので、顔が火照ったり、頭痛がしたり、ふらついたりすることがあります。このような副作用は特に全身性強皮症患者さんで多くみられます。そのため、全身性強皮症の患者さんには、少量から開始して、副作用の有無を見ながら量を増やしていく必要があります。
肺の血管の内腔が狭くなり、その結果、肺の血圧が高くなる肺高血圧症という病気で、ボセンタンというお薬が有効であることが明らかとなりました。肺高血圧症は全身性強皮症にも起こる合併症です。このボセンタンは、元々は肺高血圧症のお薬ですが、内腔が狭くなった血管を拡張させ血流を改善することから、肺高血圧症だけでなく、皮膚潰瘍にも有効であることが証明されました。実際、全身性強皮症患者さんに、ボセンタンと偽のお薬を飲んでもらい、皮膚潰瘍への効果を調べた臨床試験では、新しい潰瘍の出現が約50%減少することが明らかとなっています。またボセンタンは潰瘍ができるのを抑制する効果だけではなく、既にできてしまった潰瘍にも効果があります。副作用としては、肝障害がありますが、少量から徐々に量を増やすことによって肝障害を起こさずに内服できる場合もありますので、使用に当たっては主治医の先生と良く相談して下さい。
